老人ホームのフロアーで、「〇〇 sada様」

100歳で亡くなった、綺麗なおばあさんのお話です。


まだ若い頃、突然、目の前でご主人を亡くしてしまったsada様は、めげずに五人の息子を育て上げたものの、その日の悔しさを生涯忘れられずにおりました。
元気だったご主人が、注射を打った瞬間に死んでしまったというのです。
sada様は、医者のミスだと信じて疑わないのですが、その当時のこと、誰も分かりません。


願いは、一日も早くご主人の側に行くことでした。


ご主人の月命日が近づく度に、
「その日に死にたい、」と、食事をとらずに頑張ります。
その日が過ぎると、諦めてまた、食べる。
そんな日々が何年も続いていました。


「どうしたら、早く死ねるの?」と聞かれた時に、私は
「ご飯食べた方が、早く死ねるのよ.。」と答えました。
「そんなあ、」
「本当よ、sadaさんのしていることは、絶食健康法。内臓丈夫だから、ますます元気になってしまうわよ。」


「どうする?、今日は食べる?」というと、
「うん」と頷いた。


車椅子に乗せると、自分で髪を整えて、自走してにこやかにホールに出てきて、食事がすむと、一人で部屋に帰っていく。
「準備が出来たら、ナースコール鳴らしてくださいね。」と言っても自分でベットに移動してしまい、時々ベットや車椅子からずり落ちたりして、その度にスタッフは注意不足を叱られた。


「こんなにきれいな100歳見たことないわ、」と、顔を覗き込むと、
「綺麗なもんか、こんなばばあ、早く死ねばいい。」と憎まれ口も忘れない。


いつしか、そんな元気もなくなって、最後の日々は、ナースコールを握りしめて、ベットの中にいた。
昼も夜も、隙間なく、コールを鳴らしながら、か細い声で、色々なことを訴えて、聞いてもらうと両手を合わせて、
「早く、お墓に入れて下さい。」と訴える。


最後に会った日に、
「スッキリして死にたい」と頼まれた私は、どうにか、トイレに座らせた。
トイレで、「ありがとう、ありがとう」と拝まれたけれど、
sada様、次の日の朝に逝ったんだったわね‥。


休み明けに、sada様がご主人のもとに帰られたことを知った時、私は、
口には出せないけれど、とても、とても、嬉しかった。
「良かったね、sadaさん。本当に良かったね‥、」


人の願いは様々です。





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