大空とおく‥、(no.2)
少し、大きくなって‥。
母は、お天気の良い日には、外に茣蓙をひいて、赤ちゃんの私を遊ばせます。
北海道の空気は、さらさらとして心地よく、
私はオモチャをひとつ二つ与えられて、飽きず、ご機嫌に過ごしていました。
その当時住んでいたのは、北大からほど遠くない通りを少し入ったアパートで、通りの向こうには、写真館がありました。
ある時、近くの女の子が、私の顔を何度ものぞき込んで、
「やっぱり、そうだ。」と言います。
「どうしたの」と聞くと、
「おばちゃんちの赤ちゃん、あそこに飾られているよ、」と写真館を指さしました。
ビックリした母は、
「ちょっと見ていてね、」と、
赤ちゃんの私をそこに置き、走って行ったとか。
写真館の入口には、一歳の誕生日の記念に撮った私の写真がありました。
半年以上知らずに飾られていたその写真を、母は、写真館のご主人に頼み込んで頂きました。
「お人形みたい‥、」
中学生になった頃、
初めてその写真を見せられて、私はつぶやいた。
一歩、二歩歩けるようになったばかりの赤ちゃんが、
自分の半分もある大きなお人形を片方の手に持って、もう片方の手は椅子に添えて、無心に立っている。
(人形は昔はよくあった、ぬいぐるみの文化人形。)
「これが私‥、」
世界はどう見えているんだろう‥、と、のぞき込みたくなるような、とろんとした目。ふわふわのほっぺ。
思わず抱き上げてしまいそうな、ふわっとした赤ちゃんの姿に、何故か、ふう~、とため息をついて見入りました。
「可愛がられていたんだね‥、」
写真は、母が筒に入れてしまっておいたため、あちこち、割れ目ができていて、
平らにしようにも、ポロポロと紙が切れそうで、仕方なく、また、筒に戻して仕舞いました。
実家には、今も写真はあるのかもしれないけれど、
多分、今頃は筒の中で、ボロボロになっているのではないかと思います。
せめてね、箪笥の底にでも入れて置けば良かったのに‥、
残念なことです。
(続く‥、)